森達也監督発言の意味を考える

映画監督の森達也氏が、「憲法はこのままでいい」と考えているのに「自民党に票を入れよう」とする若者は投票に行かなくて良いと発言して問題になっています。

 かれは、自民党が結党以来改憲を目標にするという程度の事も知らない人間が投票に行くことで、自分の信じる正しい結果が歪むのを恐れたのでしょう。ですが、普通選挙は100の知識を持つ者も1の知識しか持たぬ者も同じく1票を与える事で成り立ちます。それゆえ、彼の発言は、普通選挙に基づく議会制民主主義を否定するものです。

 もちろん、共産主義は原理的に議会制民主主義とは相いれないので、左翼が議会制民主主義を否定したからといって驚くには値しません。しかし、本日現在、投票先を決めかねている人のために、彼の主張がどれほど傲慢で非民主的かを考えるために、異なる立場で相似の主張を考えてみました。

1 共産党に投票しようとする人に向けて
「独裁政治はいけない」と考えているのに「共産党に票を入れよう」とする若者(あるいは老人)は投票に行かなくて良い。
 政治学をかじった事のある人なら共産主義プロレタリア独裁を志向するイデオロギーである事は先刻ご承知でしょう。でも、実際にはそんなことも知らずに「福祉を充実してくれそう」というイメージだけで共産党に投票する人はいます。

2 社民党に投票しようとする人に向けて
拉致被害者を取り返したい」と考えているのに「社民党に票を入れよう」とする若者(あるいは老人)は投票に行かなくて良い。
 社民党は、小泉訪朝により北朝鮮が拉致を実行したと白状するまで、拉致問題は政府の陰謀という態度を取り、朝鮮労働党と友党の関係にあるにも関わらず、拉致問題解明に一切協力しなかったのは周知の事実です。でも、そんな事も知らずに「護憲政党だから平和を守ってくれるだろう」というイメージだけで社民党に投票する人はいるはずです。

3 民進党に投票しようとする人に向けて
「政府の赤字を立て直すべきだ」と考えているのに「民進党に票を入れよう」とする若者(あるいは老人)は投票に行かなくて良い。
 民進党の前身である民主党政権の悪行を数え上げればキリがありませんが、分かりやすいのはこれです。
●新規国債発行額推移
自民党政権
2007  27.5兆円  安倍政権
2008  25.4兆円  福田政権
2009  33.2兆円  麻生政権
民主党政権
2010  44.3兆円  鳩山政権
2011  44.3兆円  菅政権
2012  44.6兆円  野田
この経過を見れば民主党のバラマキ体質は一目瞭然です。

4 生活の党に入れようとする人に向けて
竹島を韓国にあげようと思っていない」のに「生活の党に票を入れよう」と思っている若者(あるいは老人)は投票に行かなくて良い。
竹島を韓国にあげよう」というのは山本太郎氏のテレビ番組における発言です。


もちろん、これらは私の本心ではありません。投票はワンイシューで決めるものではないからです。どれだけ多くの政治課題について、どれだけ深く考えて投票するかは、それこそ有権者次第です。どの政党にもダメな部分はあるし、それなりに良い部分はあるのでしょう。それらを総合的に判断して自らの代表を選ぶ。その態度なくして議会制民主主義は機能しません。
自分が思う正しい結論しか認めず、それ以外の行動を取ろうとする者に「政治的活動をするな」と主張する独裁者の手先に負けないためにも、どの政党を支持する方も是非、投票所に足を運んでください。

共産党と民進党の事実上の合併を支持する。争点は「自衛隊は人殺し」か否か

 共産党の「自衛隊は人殺し」発言がきっかけとなり、民進党共産党と野党統一戦線を組んだことへの批判が強まっています。しかし、私は今回の選挙において民進党社民党共産党と連携したことを大いに評価しています。


 共産党社民党民進党も基本的には共産主義者が仕切る政党です。ただ、その中で一応正統派の位置づけにいる日本共産党は、宮本独裁体制(1958~1997年)の間にソ連、中国、北朝鮮工作員をことごとく排除していきました。こうして日本共産党を除名された人達の遺棄場所が日本社会党でした。非同盟中立という政治学的に承認されており多少は現実的な共産党の国防政策に対して、外国に侵略されることを望むかのごとき非武装中立社会党の党是だったのも、工作員の捨て場所と考えると腑に落ちます。

 ところが、月日が経つ間に日本社会党にも日本国内での名誉欲が出たのでしょう。

 今までの党是を全て捨てて、自民党の御神輿になり(自さ社政権)、国民から見放されてしまいます。そこで、次の選挙のためにできたのが民主党社民党ですが、実態は旧社会党そのものですから、基本的に工作員政党です。

 一方、極左保守本流日本共産党は、不破独裁体制(1998年~)になった途端に中国共産党と仲直りをしてしまいます。ソ連はなくなっているし、この時はまだ北朝鮮は中国の忠実な子分ですから、早い話が日本共産党ごと中国共産党工作員政党になった訳です。

 

 どちらも中国共産党工作員の巣窟です。本当は、共産党社民党民進党などに分かれている必要はこの時から無かったのです。

 

 でも、人の感情の問題とか、民進党の本質を理解しない傀儡系の人達(民進党の中で保守系と自称している方々です)の存在とか、いろいろ障害があったので、元の鞘に収まるまで20年近い歳月を費やしてしまいました。


 もうずっと離れないでくださいね。何なら、一つの政党になってもいいと思います。その方が選ぶ方の国民も悩まずに済みますから。

 今度の選挙は、自衛隊は国防のために必要と考える人グループ VS 自衛隊は人殺しと考えるグループの戦いになりました。

 争点なき参議院選挙と思っていましたが、素晴らしい争点ができましたね。

「アベノミクスは失敗」というデマに騙されないために

イギリスがEUから離脱することが確定的となった。これによって世界経済が激動するのは必至だ。となると世界の投資家はキャッシュポジションを高め、株は急落する。中でも日本株は円高とのダブルパンチで大幅安となり、15000円を割り込んだ。

 

人の不幸は蜜の味なのか、安倍政権の不幸は蜜の味なのかは知らないが、この激動を見て「アベノミクスは失敗した」というデマを流している人達がいる。そう、いつもの反日系政党=民進党共産党社民党とそのお先棒を担ぐ新聞、テレビの連中である。

 

曰く

「株価だけがアベノミクスの唯一の頼みの綱だったのに、それさえも終わった」

アベノミクスで得をするのは金持ちばかりで、庶民の生活は益々苦しくなった」

等々

 

はい、はい。

 

反論する必要もないくらい低レベルの批判だが、参議院選挙前の重要な時期なので、こんなデマメディアやデマ政党に騙されないために、野田政権と安倍政権の格差を数値で示しておきたい。

 

株価 民主党政権最終日(2012、12、25)10,080円

   EU離脱直後                14,950円前後

 

失業率 民主党政権最終年     4.33 %

    2016年            3.27 %(IMF推計)

 

GDP 民主党政権最終年      475兆円

    2016年             506兆円(IMF推定)

 

最低賃金 民主党政権最終年     855 円(東京)

     2015年            907 円(東京)

 

失業するのは誰だろう。

もちろん、経済的弱者=庶民である。

最低賃金で働くのは誰だろう。

もちろん、経済的弱者=庶民である。

アベノミクスは株価上昇や不動産上昇により金持ちをより豊かにしただけでなく、庶民の生活も明らかに楽にしたのだ。

 

もちろん、それを実感できる人は少ないだろう。

賃金が年間1%減ったときに人は実感できるが、年間1%上昇しても実感できない。

 

メリットに対する感受性よりもデメリットに対する感受性の方が人ははるかに敏感なのだ。それは各種の心理学実験が明らかにしているところである。

 

私は何もアベノミクスが完璧だとは思っていない。

しかし、批判は

財政出動が少ないので地方への波及効果が遅いのでは」

規制緩和が中途半端なので、これでは外資が来てくれないのでは」

といった真っ当なものにしてほしいだけである。

 

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野党は、今こそ「生活保護」を真面目に考えてほしい

年収5000万円とも言われた吉本芸人の母が生活保護を貰っていたことで世の中が騒然としたのは2012年だった。早いもので、あれからもう4年がたちました。

 

マスコミが煽り、世論がバッシングと反バッシングに割れている時に真っ当な議論はできませんが、そのパワーで聖域に手をつけることができるのも事実です。

 

生活保護については、一人暮らし同士を比較した際に、最低賃金よりも生活保護の方が高いのは不当だという主張が強くなりました。

デフレだったのもあり保護基準を引き下げ、その後の人手不足で最低賃金もあがり、ようやく部分的に「最低賃金労働者」>「生活保護受給者」が達成できつつあります。

 

しかし、生活保護の問題はこれにつきる訳ではありません。

 

野党が極左政党ではなくリベラルだというなら、本当は社会が冷静になった今こそ、この手の問題を参議院選挙の争点にすべきです。

 

日本の生活保護に関する代表的な課題は以下のとおりです。

 

1 給付額が高い

 日本よりも一人当GDPの高いヨーロッパ諸国でも単身者の生活保護費は月10万円程度です。自助努力の国アメリカに至っては家族単位で年間100万円にも満たないのです。ところが、東京では単身者でも13万円程度が受給可能で、そのうえ医療費と上下水道の基本料金が無料です。

 

2 捕捉率が低い

 捕捉率とは生活保護以下の水準で暮らしている人のうち、何割が生活保護を受けているかを表す数字です。政府は概ね3割程度捕捉しているといっていますが、研究者の中でその数字を信じる人は多くはありません。仮に3割が正しいとしても、5割~9割と言われる欧米諸国に比較してあまりに低い数字です。

 

この段階でお気づきとは思いますが、1と2はパッケージです。ところが両方を主張する政治勢力はほとんどありません。

真っ当な野党なら、いつか政権を担当するつもりの野党ならば、双方の改善を主張すべきでしょう。 

 

3 窓口による規制

 1と2はなぜ両立するのか?

 「日本人には他人様の迷惑になってはいけない」という誇りがあるから?それもあるかも知れません。しかし、1と2を両立させている最大要因は「水際作戦」と呼ばれる窓口規制です。

 生活保護を申請に来た人を素直に申請させないで、「面倒を見てくれる親戚はいないのか」「働けないのか」「売れるものがあるんじゃないか」等々厳しく追求し、申請そのものをさせまいとするのです。

 質問項目はどれも正しいのですが、本来ならば申請受理後、行政が調査すれば良いことばかりです。しかも、窓口対応ですからどうしても鬱陶しい相手には甘くなりがちです。いわゆる「在日特権」など法的権利としてはありませんが、こういうルールではなく窓口のマンパワーに頼る姿勢が「事実上の特権」を作ってしまうのです。

 ですから、

「水際作戦を止めさせ」その分「申請後の調査権限を強化=プライバシー云々を言わせず、非協力や虚偽事実の申請があったら即却下」する姿勢が

必要なのですが、前者を主張する人が後者を主張するのを聞いたことがありません。

 

4 脱出へのインセンティブがない

 厳しい窓口指導を潜り抜け申請できると、かなりの確率で無事に受給できるようになります。でも、人としての本当の戦いはここからではないでしょうか?

 しかし現行制度は、受給者が再び社会に貢献し税金を払う側の人間になる気が起きないものになっています。

 働いてお金を貰ってもその分受給額が減るので働き損です。

 アメリカのように受給年限もないので「このままでいいや」と思い勝ちです。

 使途に制限がないので、パチンコだけが楽しみの受給者も大勢います。

 これらも、受給額を減らす代わりに一定額を超えるまでは労働で得た額の半額しか支給額を減らさない。

 医師の診断がない限り保護は5年で打ち切る。

 ギャンブルへの支出を禁止し、受給と引き換えに職業訓練を義務付ける。

等々他の先進国に習えば、様々な制度変更が可能です。

 

 そういう真っ当な主張を投げかけることこそ野党の責任ではないでしょうか。

 

 「可哀想な受給者をいじめる政府自民党」なんて言っても、もうバカな老人しか騙せませんよ。

 

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視界良好。さあ、デモクラシー2.0を始めよう!

ついに舛添都知事が辞任した。

これで、安倍政権にとって参議院選挙、唯一の懸念材料が払拭されたと言えるだろう。

 

最近、政治資金規正法ザル法なのを良い事に、明らかに私的流用と思われる使い方をしたと思われる政治家の名が2名上がった。

 

一人は東京都知事舛添要一氏であり、もう一人が野党第一党政調会長山尾志桜里氏だ。

そして、舛添氏は自民党員ではないが、自民党は彼を知事に推薦した責任を果たし、都議会において不信任決議可決をちらつかせて首を取った。

民進党は未だ何一つ責任を取ろうとしないし、彼女に取らせようともせず政調会長という要職に置き続けている。

 

自民党と比較して民進党の方が優れた点などほとんど無いが、唯一金銭に関わる問題だけは民進党の方がましかも?というのが国民の印象だった。

だが、今回の両党の対応の違いが、それさえ幻想だったことを白日の下にさらした。

 

そして、7月10日に参議院選挙がやってくる。

民進党共産党と組むらしい。

この点でも民進党はついに正体を現したと言うべきだろう。

 

資本主義や愛国心を前提として、平等に重きを置くリベラルな政治勢力と自由を重視するコンサバティブな政治勢力が競い合うのが、政治の世界の国際標準だ。

 

ところが、我が国では自由よりも平等を推進してきた自民党が「保守政党」のレッテルを貼られ、資本主義や愛国心を否定する民進党社民党共産党などの極左政党が「リベラル」を詐称してきた。

それゆえ、日本の政治を正常化するためには極左政党が壊滅し、現在、マスコミに誹謗中傷されている自民党よりも「自由」を重視する政党が伸長する必要がある。

 

来る7月10日の参議院選挙が、政治の正常化の第一歩になってほしいと切に願う。

長きに渡った戦後憲法の下の偽りの民主主義。それにおさらばする第一歩に。

 

極左政党の壊滅は日本のデモクラシーを一段引き上げる事は間違いない。

反日勢力に毒されたマスコミではなく、国民の手でデモクラシー2.0を始めよう。

 

 

 

 

 

「科学」と「信仰」と「神秘主義」、この深遠な関係に挑む  『ダ・ヴィンチの謎、ニュートンの奇跡』(詳伝社新書)  三田 雅広

http://shuukansinsho.hatenadiary.jp/

 

 

 無邪気に「科学的結論」を信じることが如何に愚かしいかについては枚挙に暇がない。例えば、精神医療の世界では1935年に「ロボトミー手術」という前頭葉の一部を切除する手術が当時の「科学」の最先端だった。この手術をご存知の方は、統合失調症の治療と思っているかも知れないが、当初は「うつ病」を治す画期的な手術として受け入れられたのである。その後、これが単なる人格破壊に過ぎない判り日本で行われなくなったのは、なんと40年後の1975年である。血友病患者へのエイズ蔓延も、当時の「科学」が引き起こした。「科学」概念をさらに広げれば、ナチスのユダヤ人虐殺を正当化したのも第一次世界大戦後の「社会ダーウィニズム」という「科学(少なくともこの論者はそう思っていた)」だし、20世紀を通じて最も多くの人々を殺戮した共産主義思想は今でも「科学的社会主義」を自称している。

 本書は、この「科学」なるものが、カトリックが支配するヨーロッパから如何にして生まれたかを解き明かす書である。今でこそ「科学」の側の人達は神秘主義=オカルティズムを「反科学」の代表のように扱うが、中性ヨーロッパではローマカトリックという「宗教」に対し、「科学」と「神秘主義」がスクラムを組んで対抗していた。

 カトリック世界では神父の言うことこそが真実だ。これに対して「聖書」に真実を求めたのがプロテスタントであり、秘密裏に行う思考、実験、自然観察により真実を解き明かそうとしたのがグノーシスという名の神秘主義者=科学者だったのである。彼らの究極的目標は「神が創った真実を解き明かす」ことであり、反カトリックにならざるを得ない。ダ・ヴィンチの偉業もニュートンの功績も、その文脈で再検証すると腑に落ちる。

 フィナボッチ数列や黄金比ピタゴラスの定理など初歩的な数学の話も出てくるが、決して難解ではない。

私の唯一の不満は、科学が宗教や神秘主義と決裂し、ついには思想界の頂点に君臨するまでを描いているが、その後の揺らぎを書いていない点だ。宇宙の法則を全て解き明かしたかに思えたニュートン物理学は、アインシュタインの登場により「真実」ではないことが判った。さらに今では「暗黒物質」や「暗黒エネルギー」というSF界やオカルト界の専門用語=概念が高校教科書に記載され、人類は宇宙法則をほとんど解明できていないと教える。

そこを書かない著者は、私同様、「科学万能時代」の古い人間なのだろう。

左翼系学者の挑戦と限界   『「安倍一強」の謎』(朝日新書) 牧原 出

 

http://shuukansinsho.hatenadiary.jp/

 

 民主党政権が終焉し、政治の世界では「安倍一強」時代が続いている。本書は左翼系の大学教授がその謎の解明に挑戦した著作である。
 第1章では、与党しか知らなかった自民党が、3年間の民主党政権を経験して「政権交代を知る」より逞しい政党に変化したと分析する。筆者が言うまでもなく、日本以外の国では政権交代は日常行われる事であり、自民党は与党、野党、与党という経験によりグローバルスタンダードにおける「普通の政党」になった。これが自民党の強みだ。しかも、安倍総理は第一次安倍内閣時代に参院選挙で手痛い敗北も経験しているので、世論の気まぐれさも熟知している。これに対して民進党旧民主党)は、万年野党から3年間の与党しか経験していない。しかし、数年か10数年のうちに党を立て直し与党になる日が来る、という筆者にとっての希望的観測を述べる。
 第2章での内閣官房分析は鋭い。安倍内閣は菅氏を官房長官に起用したが、菅氏の最大の特徴は、政界に特定の親分を持たず、常に政局・政策の面から合理的かつ最適な行動を取れる点だ。しかも、安倍内閣は橋本内閣や小泉内閣のような統治機構の根本的な刷新には手をつけず、官邸機能の強化だけを目指した。それが菅氏を中心とした安倍内閣の強みである。しかし、このポストが勤まる人間は、今のところ菅氏しかいない。それが将来的に安倍内閣の弱みになる可能性がある。
 第3章では衆参で過半数議席を占めながら、かつての自民党のように野党に鷹揚な態度を見せる事無く、自身の政策実現を急く安倍総理への疑問が呈されている。
しかし、それを疑問に感じるのは筆者が左翼ゆえにすぎない。かつての自民党政権は、その多くが「政権与党にあり続ける事が目標」だったのに対し、安倍政権は「日本の現状や未来を見たときに必要な事(少なくとも安倍総理が必要と思っている事)を行う」ことを目標としている。その意味で自民党は、ようやく「普通の政党」になれたのであり、各議員が国会議員であり続けたいだけの烏合の集たる民主党は「普通以下の政党」でしかない。
 私は、野党第1党がそういう政党であることこそが「安倍一強」の理由だと思うのだが、それが見えないのは左翼系学者の限界だろう。