「なんでお前ごときが何冊も本を書けるのか」と思っている(であろう)人から、
「私も本を書こうと思っているのですが、どうしたら本を出版できるのですか」という質問を受けることがあります。
そういう時は、「偶然の積み重ねですよ」とか言って誤魔化します。
だって、本当のことを言ったら嫌われるから。
相手に侮辱したと思われ(本当は私が侮辱されているのだけれど)、傲慢なやつと思われ(本当はこんなことを気軽に聞く人が傲慢なのだけれど)、嫌われても何もよいことはありません。
私は文章は過激に書きたいことを書いていますが、実生活の言動は(やっぱり過激だけど)多少は気を使うのです。
でも、昨日10年ぶりにお会いした編集者から出版企画のお話があって(実現するかどうかは不明ですが)、気分がよいので本当のことを書きます。
家を建てたことのない人から、
「よい設計図を考え付いたんだけど私に家を建てさせてくれませんか」
と提案されて
「じゃあ家を建ててください」
と頼む阿呆がこの世にいるでしょうか?
本を書いたことのない人が、どんな素晴らしい企画を思いついてもそれに乗る出版社はありません。
(何本も論文を書いている学者は例外です)
だって、その人が売れる作品を書けるとは限らないから。
そして、本を書いたこともないのに、思いついた企画を持ち込む人が書ける可能性はほぼゼロだから。
大の大人が「本を書きたい」という動機はそもそも間違っています。
ノンフィクションなら「これを世に問いたい」でなければなりません。
そして、それほど問いたいことなら「書かずにはいられない」はずです。
だったら、本になる前に原稿ができているはずです。
そう、本を出したことのない人が出版する場合、まず「原稿ありき」なのです。
1 最初はとにかく原稿を仕上げる。
さて、次からはテクニックの問題です
2 原稿にあった出版社を探す。
路線の合わない本は原稿が良くても出版してもらえません。
「分野」はもちろん「堅さ」「右か左か中道か」「権威主義か」などを調査します。
3 その出版社が持ち込み企画モノを出しているか否かを探る
企画モノを最初から出さない出版社にアプローチしても無駄です。
本のあとがき等を見て調査しましょう。
4 原稿をゲラ(本になる前の編集者が読むもの)の形にする
ゲラの形にしておくと編集者の心象は良くなると思います。
5 原稿を狙った出版社数社に送付する。
就職と同じで本命だけというのは難しいと思います。
と、ここまでやると多少は本になる確率は上がるのではないでしょうか。
では、その前段階として、本にしてもらえる原稿をどのように仕上げるのか。
1 言いたいこと、世に問いたいことがある(これが大前提)
2 言いたいことの核心を世の中の誰も書いていないことを調査する。
自分よりメジャーな人が先に書いていたら本にするのは無理です。
3 5章前後の章立てを考える。
設計図なくして書けるのは天才だけです。
4 各章ごとに、その分野のメジャーな論者が何を言っているかを調査する。
商業出版の世界では新人が大御所を批判するのもありです。
その気概がないなら本を書く意味がありません。
5 第1章からでなくても良いので各章の文章を書く。
場合によっては書きたいことを書いて各章にあてはめていくという手法もありです。
6 12万字(原稿用紙300枚)前後の原稿量にする。
どんなに良い原稿でも、分量の多すぎや少なすぎは本になりづらいです。
7 最初の数ページは、なんとしても人を引き付ける文章を書く。
編集者が暇な時に持ち込み企画を読んでも2ページ目にたどり着くのは数十人に一人だとか。
「後で面白くなる」なんてのは新人には通用しません。
私が心がけていることは、こんな感じでしょうか。
これだけ書いたのだから、もうリアルで私に聞いてこないでね。