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安保関連法案賛成派にこそ読んで欲しい。中東有事での後方支援は危険

政府案がそのまま衆参両議院を通過すれば、中東有事の際に自衛隊がアメリカ軍を後方支援する事が可能になります。具体的には米海軍への物資輸送とホルムズ海峡付近の機雷除去が主な任務になるでしょう。
私は、東シナ海南シナ海で中国の軍事拡張を封じるために自衛隊が後方支援する事には大賛成ですが、中東有事に対する後方支援には反対です。以下、その理由を述べます。

1 アメリカの中東政策はコロコロ変わる。
 イラク戦争の記憶が生々しいためか、現在中東諸国でアメリカと事を構える覚悟のある中東諸国はありません。ですから、アメリカが軍事行動を起こす相手として最も可能性の高いのはIS(イスラム国と称するゲリラ)でしょう。しかし、中東諸国の多くは政治的に不安定ですから、いつ原理主義的なイスラム主義を標榜する国が誕生するか、その国とアメリカが軍事衝突するか、まったく予測できません。ただ、一つ予測できるのは、政府案が通れば日本は後方支援を断れないだろうという事です。
 対立構造が単純かつ安定的な東アジアでさえ、まともな外交のできない日本の外務省が、中東で上手く立ち回れるとはとても思えません。

2 陸の後方支援はハイリスクである
 アメリカがISを軍事攻撃する際に日本が後方支援するとなると、陸路を使った物資輸送も任務に入る可能性が出てきます。空や海における軍事衝突では、武器の性能が圧倒的に大切です。東シナ海南シナ海付近で日本を含めた米国同盟軍と中国軍が衝突すれば、中国軍は駿殺されますし、日本単独で物資輸送している際に中国海軍と遭遇しても、自衛隊は余裕で勝てるはずです。
 しかし、陸ではそうはいきません。ライフル程度の武器しかないゲリラでも戦闘の仕方次第で近代軍に相当の被害を与える事が可能です。
 陸での後方支援は自衛隊にこれまでと比較にならない危険な任務を与えることになるのです。

3 中東諸国の対日感情を害しかねない。
 アメリカがISに対し直接的な軍事行動を取れば、中東諸国のほとんどは賛成を表明するでしょう。それは中東諸国の国家運営がリアリズムに基づいて行われているだけのことであり、国民感情は別です。
 彼らが「キリスト教徒がイスラム教徒を殺害している」「白人が我々の同朋を殺している」という感覚を持たないとはとても思えません。その時に日本が武器弾薬などの物資輸送を手伝っていたとしたら、米軍艦が通りやすいように機雷除去作業をしているとしたら、現在の圧倒的な親日感情に傷がつくことは避けられません。

4 中国が漁夫の利を得る可能性がある
 中東諸国民の対日感情が悪化して、最も得をするのは中国です。今後益々石油が足らなくなる中国は、国内でイスラム民族を弾圧しつつも中東諸国とは密接な関係を築こうとしています。中東諸国にとっても、技術水準が低く石油を「がぶ飲み」してくれる中国は大切なお客様です。という事で、中東諸国民の対日感情の悪化は、どんな形で中国を利し日本に悪影響を与えるか予測できないのです。


 幸い、野党の中には「徴兵制になる」といったデマを飛ばし「絶対廃案」と主張する党だけでなく、対案を出している党もありますから、政府は修正協議に応じて一部変更することができます。
 その時に課題になるのが「盟主国アメリカの内諾」と「衆議院での再議決などの立法テクニック」です。その両方の要請を一気に満たす手法があるのでご紹介します。


重要影響事態安全確保法(周辺事態法の改正バージョン)の附則に
「但し、当分の間、本法による自衛隊が活動できる範囲を東経80度以東東経180度以西とする」


この一文を入れるだけで、中東有事における直接的な後方支援は不可能になります。
参議院で政府案を修正可決すると、衆議院に戻して再可決しなければなりませんが、その時間的余裕がないので、与党は修正案に消極的なのです。
しかし、この案ならば、ほとんど議論がいらないので政府が修正趣旨を説明して即日可決しても問題ありません。
また、附則に過ぎない上に「当分の間」という暫定文言入りですから、アメリカに対して説明することも比較的容易いはずです。