今、下水汚泥を肥料にする愚行

下水を処理する際に発生する汚泥には高濃度の放射性物質が含まれます。
そのことは避けられません。
だって、地面に降り注いだセシウムは、最後は下水処理施設に流れつくのですから。

私はこの汚泥については埋め立てに使うのが良いと思っています。

予備知識として汚泥の行く先を記しておきますと

1 埋め立てる
2 燃料やセメントに使う
3 肥料にする

が主なものです。

超危険派は、これらすべてが許されないと騒いでいますが、ではどうすれば良いかの答えがありません。

汚泥はどんどん溜まりますから、なんらかの処理をしなければ汚泥はいつか皆さんの近隣に積みあがることになります。
放射性物質を含む汚泥が隣にあるのと、海底に沈めるのと、どちらが良いか。
誰が考えても判るはずです。

超安全派は、何に使っても大丈夫と主張します。
それが、今回の内藤氏から指摘された問題です。

私は、当分の間、2も見送る方が良いと思いますが、3はもっての他です。
ちなみに内藤氏が指摘しているように3の許可基準はキロ当たり200ベクレルですが、2の許可基準は100ベクレルです。
燃料やセメントより基準が甘いって…


なぜ、わざわざ放射能入りの肥料をこの時期に使用する必要があるのか。
ただでさえ汚泥由来の肥料は、重金属が含まれていることがあるので人気がありません。

また、汚泥の処理方法としても、肥料としても下水汚泥は大きな比重を占めている訳でもありません。

例えば平成18年度の数字で紹介しますと
日本では年間に9,756,563トンの肥料が生産されていますが、その中で汚泥を原料とするものは1,325,260トンに過ぎません。
しかも、そのうちの純粋に下水汚泥だけを原料とするのは、わずか81,679トンです。



もちろん、循環型社会の創造という点で、汚泥を肥料にすることは前向きに取り組むべき課題です。
しかし、長期的な課題と喫緊の課題を混同してはいけません。
何も、この時期に放射能物質入りの下水汚泥肥料を認める必要など、まったくないのです。


政府のこの愚行によって、失うものは未来の不確定な命だけではありません(それが一番大事ですが)。

下水汚泥肥料を使用していない圧倒的な農家の方が更なる風評被害に会うでしょう。
肥料も地産地消という側面がありますから、東北の農産物は益々売れなくなります。
放射能入り肥料をわざわざ使用していることを海外の人が知れば、日本の農産物のブランド価値は地に落ちるでしょう。


安全派の方にも(私も世間一般よりも放射性物質の危険性は低いと思っている点で安全派です)、農家の方にも、様々な産業界に従事されている方にも訴えたい。

下水汚泥肥料を認めることは、将来の不確定なリスクが増えることだけを意味しません。
我々の目の前にある利益を失うことでもあるのです。