教育界の「大阪の陣」 橋下改革を支持するが勝敗は微妙か

大阪がとんでもないことになっている。


知事が代表をつとめ、議会で過半数を握る「維新の会」と大阪府の役人が対立しているのだ。
こんなことは考えられないことである。

役人が集団で与党政治家に歯向かうのは、通常以下の2つの場合しかない。


1つ目は、この権力が長くないと踏んだ場合。
これは、国政で起きていることだ。国の官僚たちは、もはやポスト民主党政権を睨んでいる。
自分達の主張どおり政治家が動くなら協力するが、そうでないときは面従腹背サボタージュを決め込む。


2つ目は、役人の利権と完全に対立する場合
電力利権に噛み付いた議員や、検察権力に楯突く議員は、自民党政権時代の与党議員でさえ容赦なく追い落とされた。


大阪の場合は、両方だろう。

橋下府知事は、次の選挙で市長に転出する。
後任の府知事候補者は決まらない。
となると、「維新の会」は多数派野党に転落する可能性がある。
役人としては、ここで完全に彼らの言いなりになるよりは、自民・民主・公明と組んでバトルを展開しておきたい。
これが一つ目。


大阪に限らず関西の自治体は、官公労と自治体幹部がズブズブの関係になり、第3セクターへの天下りなど様々な利権の蜜を吸ってきた。
不良職員の肩を持つ官公労の顔を立てて「目こぼし」することで幹部側は官公労に恩を売り、官公労幹部も天下り枠を一部もらいながら、両者は喧嘩するふりをしつつも共存できた。
橋下知事は、このプロレス的関係にメスを入れようとしている。


ということで、大阪府の役人たちは必死の抵抗をしているのだろう。


私は、潔癖ではないでの「天下り」問題に興味は無い。
納税者からすると腹が立つのは理解できるが、第3セクターへの天下りの場合、府職員の定数削減とセットだから、総支出額は減っているはずだ。
天下りを許さず、第3セクターなど使わず、完全な民間企業に仕事を渡せば良い」という主張は正論だが、そうなると政治家が出てきて、もっと悪質な不正が起きる可能性が高い。
役人がおいしい目をみるか、政治家とその周辺のゴロツキがおいしい目をみるか。
それは府民が決めることだ。
大阪の膿は、ちょっとやそっとで出し切ることはできない。
だから、職員条例についてはニュートラルである。

気持ちとしては、何もやらないずに腐るより、やって失敗する方が好きなので橋下知事を応援しているが…




ただ、教育基本条例については圧倒的に支持する。

民間人校長を多数入れようという姿勢が素晴らしい。
校長を総入れ替えから半数入れ替えに変えたそうだが、これも良いことだ。
民間人校長の学校と、通常の校長の学校の学力テストの伸び率や不登校の増減を追跡調査し、この政策の効果も検証できる。

先に成立している国旗国歌条例とあわせれば、日本有数の異常さを誇る大阪の学校も多少は正常になるだろう。


ただ、大阪の校長になるために全国から優秀な人材がどれだけ集まるのか。
橋下知事が府を去っても、政策は継続されるのか

通常は、教育行政から見捨てられた民間人校長ほど可哀想な存在はない。
しかし、大阪の場合は「維新の会」が教育行政を押さえ込んでこの政策を遂行しようとしているので、
参入する民間人校長たちは、最初から教育行政と緊張関係に立つはずだ。
となると、今まで以上にタフな人材でないと勤まらない。
しかも、橋下財政再建により職員の年収が切り下げられ、民間人校長の年収は1千万前後だ。


年収を下げてまで、政治と行政が反目しあう中、日本有数のガラの悪い町の校長に赴任してくれるビジネスマンがどれだけいるか。
そして、応募してきた多数のビジネスマン達に本当に校長が勤めるか(肩書きを外して校長になった途端に能力を発揮できない民間人校長もいるので)



これは教育界の「大阪の陣」である。
当分、この問題から目が離せない。
私個人としては、どういう形かは判らないが、状況によっては参戦する覚悟はできている。