お気軽タトゥー問題に絞って考えてみる

大阪市の刺青問題は、暴力団員やそれに近しい関係の人間が市職員に潜り込んでいるという問題と、お気軽な不良系タトゥー問題に分けて考えるべきだ、という点は先の記事で書いたとおりです。


で、さすがに暴力団員や緊密交際者が市職員にいたっていいじゃないかと主張する方は極々少数派なので置いておいて、お気軽タトゥー問題について考えてみたいと思います。


これを是とする人達の考え方はシンプルかつ合理的です。

刺青は世界のあちこちで見られる文化であり、それを入れるかどうかは個人の自由である。
大阪市職員といえども、業務に支障のない限り自分の体に刺青を入れるか否かの自由はある。
その上、「刺青をしてはならない」という明文もない。
従って、刺青を強制調査する必要もないし、今後も刺青の有無で採用差別することも各人の自由を侵すものだ。


価値の多様性を認めることはデモクラシーの根本原理であり、刺青を入れるか否かを価値の多様性の問題と捉えれば、このような考え方は至極当然に映ります。



これに対してお気軽タトゥーも非と主張する人(私もこちらです)の根底にあるのは、常識、世間知、情緒といった説明のしずらいものです。
 ですから、それを言葉にすると残念ですがちょっとバカっぽくなります。
「一般には自由でも公務員はダメ」
「他の企業だってまともな企業では社員は刺青などしていない」
「刺青している奴らを税金で食わしてやっていると思うと腹がたつ」
等々
「それはお前の主観にすぎないだろ」「公務員だからこそ趣味趣向で差別されることなく採用される権利があるはずだ」と是派から反論されるとちょっと再反論しずらい。これがディベートゲームなら負ける気がします。



では、何故私がお気軽タトゥーでも非とするか。
世の中の正義は論理なんぞで動いてないからです(あぁ、いかにも保守オヤジですね)。
独身男性教師が18歳を過ぎた高校3年の女生徒とセックスすると大抵は「信用失墜行為」を行ったということで懲戒免職になります。18歳を過ぎれば淫行条例の保護対象ではないのに。両性の合意により結婚だってできるのに。
独身男性教師が歳の近い教え子と結婚すると祝福されます。結婚式(や二次会で)実は在学中から二人はデキていたと暴露されたりします。つい10数年前までは、花嫁の父親以外はそれを笑って聞いていました。

世間の正義感とはそのように流動的であり、本質的にロジックで説明できるものではないのです。


しかし、公務員は世間の正義感に従って行動することを要求されます。

ある高校教師が大学受験に失敗した女生徒を「ソープランドで働けば」と言ったらクビになりました(本当にあった事件です)。


ソープランドは建前は「本番なし」ですから合法です。お気軽タトゥーを自由と考える人は、合法風俗に就職することも自由としなければ論理的一貫性が崩れます。そして是派の「自由」からロジカルに考えると、この教師のやった行為は、受験に失敗した生徒に合法な仕事に就けと進路指導しただけということになります。賞賛されこそすれ非難されるのはおかしい。まして辞める必要はまったくない。


でも、ここまで来ると多くの人はやっぱりおかしいと感じるのではないでしょうか。


公務員は、本来世間の情緒的、感覚的、非論理的「正義」に縛られているはずです(公務員でなくても縛られています)。
しかし、公務員の身分は法的にある程度保証されているので「一発でクビ」にはできない(多分、銀行員なら一発でクビでしょう)。



そこで、この辺が妥当なところじゃないですか、と思ったのが
先の
1 今後は、明文化してタトゥーのある者は採用しない(たぶん訴訟になっても自治体は負けません)。
2 現在、タトゥーをしている職員は当分の間は目立たないような措置(腕なら夏でも長袖、手の甲や首周りなら肌色クリームで隠す)をし、一定期間内に消す施術を義務付ける。
3 2の義務を怠った者については施術を勧告し、勧告に従わないときは免職とする。
4 施術費用のない者には、共済組合等から特別融資をする(金利あり)。
という手法です。


追記

パチンコ店を営業されている方から
「遊技業は業界全体で暴力団根絶目指してますので。はっきり言って不快です。訴えたい気分です。訂正を強く望みます。」という書き込みを頂きました。

パチンコ業界に限らず、かつて暴力団が巣食っていた業界が「浄化」を目指しているのは承知しています。しかし、暴力団が存在しない業界はそもそも「暴力団根絶」を目指しません。

とはいえ、浄化に真剣に取り組んでいる業界の方に不愉快な思いをさせたとしたら申し訳ないので、今後は「暴力団が未だに少なくなく、そもそも脱法賭博業界でもあるパチンコ屋から」と丁寧に書くようにします。