大人にこそ一罰百戒を

いじめ犯罪による加害者の逮捕は、2000年代になってさほど珍しいことではなくなりました(もちろん、犯罪の量に比すれば氷山の一角ともいえないほど少数ですが)。


でも、残念ながら子ども達は大人ほど罰則を受けた時のダメージが大きくありませんし、ダメージの想像力も足りません。ですから他県で逮捕者が出ても自分とは無縁と思う子も多いでしょうし、どのみち数年経てば卒業し別の子どもが学校にやってきます。


しかし、大人は違います。
もし、校内犯罪がおきてそれを助長した教師が逮捕されれば、全国の教育委員会や学校は目の色を変えて教師を指導するでしょう。

行政マンの方々ならば、この10年20年の間にどれだけ我々の職場がクリーンになったかよくよくご存知のはずです。かつての公務員社会は、カラ出張やカラ残業、裏金作り、公金による接待等々今思えば「腐敗」以外のなにものでもありませんでした。
 ※ それをかつては「旨みがあった」と言う人がいるのも事実ですが…
 

それが、一握りのやり過ぎた者が逮捕されただけで、国はもちろん多数の地方自治体まで次々とそのような不正と手を切ってきたではありませんか(まだまだ国の外郭団体や一部の自治体にはあるようですが)。


一罰百戒が効くのは子どもではなく大人です。

とりわけ公務員社会は「事なかれ主義」だからこそ一罰百戒が極めてよく効くのです。


いじめ事件が起きるたびに教員の「事なかれ主義」を批判する人がいます。お気持ちは判りますが、公務員が「事なかれ主義」なのは当然です。何せ減点主義が基本ですから。これを下手にいじろうとする動きもありますが、「事なかれ主義」の権化である人事系役人がいじるので、益々ひどくなっていくだけでしょう。


それよりも政策を考える場合は、公務員は事なかれ主義であることを所与条件として考える方が現実的です。


だから、何としても今回の事件で鼻歌を歌っていた教員の逮捕にまでこぎつけてほしい。

刑法上犯罪は、成立するか否かの二択ですが、実際は
逮捕→送検→起訴→裁判→刑の執行と進んでいきます。

ですから、裁判で有罪にならなければ「無罪」です。

しかし、教育委員会という役人社会に与えるインパクトは、結果的に様々な要因で不起訴になろうとも無罪になろうとも、いや送検さえ見送ろうとも「逮捕」だけでも十分に強烈です。


役人の体質として、「今後は先生は、いじめを黙認しないようにね。ましていじめで加害者側には絶対加担しないように」という方針を出すだけではすまないでしょう。
おそらくは
「いじめで加害者に加担した教員は免職又は停職とする」
「いじめの事実を知りながら指導を怠った教員は停職または減給とする」
等の具体的基準をいくつかの教育委員会は打ち出してくるでしょう。
(本当は、これを条例でやるのがベストだと常々主張しているのですが)

※ 一時期、飲酒による交通事故が社会問題になり、役人世界ではこれへの罰則が非常に厳しくなりました。これと同じことが期待できるのです。


都道府県や政令指定都市など大きな自治体にその動きが出れば、通常は大津市のような地方の自治体もそれにならいます。


これで世の中からいじめ犯罪を撲滅できる訳ではありませんが、犯罪に手をかしたり、目の前の犯罪を黙認した公務員は処分されるという当たり前の状態を造ることは、学校を正常化するための力強い一歩になるでしょう。


今回の事件が、そのきっかけになることを願っています。