安全保障関連法改正の必要性と問題点

「安倍さんは戦争したいの」「中国は攻めてくるの」とか聞かれる機会が多くなったので、「俺に聞くなよ」と思いながらも解説してみました。

1 戦後一貫して続く大前提
(1)自衛隊は単独で戦えない
 自衛隊が強いか弱いかはよく議論されますが、私は自衛隊を「極めて訓練度の高い、不完全な軍隊」と評価しています。従って、米軍と共同で戦う場合は、世界トップレベルの強さを発揮しますが、自衛隊単独では日本国を守れないのです。
具体的に言うと、軍事力は「防衛力」と「報復攻撃力」に分解されるのですが、自衛隊は後者(兵器レベルで言えば巡航ミサイル、空母、爆撃機など)を持ちません。従って、尖閣列島沖縄諸島を上陸占領されても取り返せない、他国に東京を攻撃されても他国の首都をほとんど攻撃し返せないのです。
何故、こんな状態で平和が守られているかと言えば、自衛隊の「防衛力」は強固なので日本を侵略するには時間がかかる、その間にアメリカが日本に侵略してくる国に報復してくれる、というスキームを信じているからです。従って、日本が独自で「報復攻撃力」を持つまでの間は、日米安全保障を強固に保つことは日本の生命線です。
(2)中国軍シビリアンコントロール下にない
 中長期的に見た時に中国に日本の領土(とりわけ尖閣諸島沖縄諸島)を侵略する意図があるかどうかは不明ですが、はっきりしているのは当面は堂々と戦争を仕掛けるとは考えられないということです。
 しかし、軍幹部が国際政治に直接口を出す状態から、現在中国では政府が軍を掌握できていないことが読み取れますし、「シビリアンコントロール」という理念さえありません。あるのは権力闘争だけです。そうなると、中国政府に戦争をする気はなくても、日本の領海で中国軍が米軍や自衛隊に攻撃をしかけてくる危険性は少なくありません。この場合は侵略行為を受けた訳ですから、中国軍が引いた上で中国政府が謝罪と賠償をしない限り、自衛戦争になる可能性がゼロではないのです。

2 最近の情勢
(1)日本の国土及び東シナ海日本海、太平洋周辺
 日本はこれらの海に囲まれていますから、この海域の平和と安全は最重要課題です。この近辺で日本の国益に直接かかわる安全保障上の課題は、
・日本国民が日本の国土で北朝鮮に拉致された問題
・日本の領土である北方四島がロシアに占領され続けている問題
・日本の領土である竹島が韓国に占領され続けている問題
・日本の領土である尖閣諸島について、中国が領有権を主張している問題
・中国が日中双方の200海里(大きくかぶっている)の中間線を大幅に超えた領海の主張をしている問題
の5つが代表ですが、朝鮮有事の際に戦争に巻き込まれる可能性もゼロではありません。
 但し、上3つ(拉致問題北方領土問題、竹島問題)は、日本の側から「国際紛争を解決する手段として」軍事力を使わない限り、戦争にはなりません。ですから、軍事衝突が起こる危険性が圧倒的に高い相手方は中国ということになります。
(2)南シナ海周辺
 このエリアでの日本の最大の課題は、シーレーン(石油等の輸送ルート)の確保です。その大切な南シナ海で、中国は浅瀬を埋め立て、人工島を造り、自国の領土と領海を増やすという露骨な国際法違反行為を行い、アメリカ、インド、東南アジア諸国と軍事衝突が起こる危険性が増しています。
 万一、軍事衝突によりシーレーンが封鎖されれば、日本経済にとって死活問題ですから、「日本人の財産」を守るために、日本として可能な貢献が求められています。
(3)中東付近
 従来のイスラエルイスラム諸国の対立に加え、イスラム諸国内もシーア派スンニ派世俗主義(トルコ、フセイン時代のイラク、エジプトなど)対イスラム主義、親米派(サウジ、アラブ首長国連邦等)対反米派、そしてISの台頭など複雑怪奇で、とても日本外交がその中で上手く泳げるとは思えません。
しかも、エネルギー事情から全ての国と等しく仲よくしておきたい日本と、シェールガスの採掘によりエネルギーのほとんどを自国で賄いうるアメリカとはまったく利害が異なります。だとすれば、常にアメリカの軍事活動を支援するような対応はリスキーです。

3 安保関連法案の中身
 今回の法案は1本の新設法案と10本の改正法案から成り立っています。改正内容は、大きなものから派生的なものまでありますが、重要な部分は以下のとおりだと思います。
(1)武力攻撃事態法及び自衛隊法の改正
 マスコミを最も賑わせた集団自衛権に絡む改正です。従来の二つの法律では、日本国や自衛隊が直接攻撃されない限り自衛隊は反撃できませんでした。しかし、今回の改正により、同盟国や同盟軍が攻撃された際にも反撃が可能になります。
これは、東シナ海の状況を考えると当然の改正です。もし、日中の中間線よりも日本よりの海域で米中が軍事衝突し、自衛隊が米軍とともに戦わないとすれば、その後アメリカが日本防衛に消極的になるのは目に見えています。それは、単独で戦えない日本にとって、安全保障上の重大な危機になります。
しかし、南シナ海や中東付近では話は異なります。このエリアの自衛隊の任務はPKOや後方支援ですから、南シナ海での米中軍事衝突、中東付近での米軍とIS等の軍事衝突が起きた際に日本が直接米軍側に立って戦わなくても、後方支援さえ怠らなければ裏切りにはなりません。
もちろん、後方支援も軍事行動ですから、米軍の敵に攻撃される危険性はありますが、その際に反撃することは現行法で可能です。
政府法案の問題点は、集団的自衛権という解釈改憲にあるのではなく、それが適用される地域が日本国周辺に限定されていない点だと私は思っています。
(2)国際平和支援法案の新設
 唯一の新設法案なのにその内容がほとんど騒がれないのは、マスコミや野党も「危険」と認識していないからでしょうか。
イラクアフガニスタンにおいて国連軍を後方支援する目的で自衛隊を派遣していましたが、その時は一々「特別措置法」を制定していました。今回、国際平和支援法ができることで一々特別措置法を作る必要はなくなります。しかし、国会の事前承認が必要なので政府の判断だけで国連軍支援のための自衛隊派遣はできません。また、この法律に基づいて派遣されるためには、国連による武力行使が前提になります。
世界が共同して軍事力を行使する際に、日本が後方支援することに反対するつもりはないので、この法案そのものに反対ではありませんが、国会議決については慎重に議論してほしいと思います。例えば、現在停戦中の朝鮮戦争国連による武力行使の典型ですが、万一朝鮮半島で再び戦争が起きた時、日本が米韓を中心とした国連軍に後方支援する必要があるのか大いに疑問です。後方支援した際に、在日朝鮮人を多く抱える日本に、テロ等のリスクがどれほどあるのか等々、検討すべきリスクは山積みだからです。
(3)周辺事態法の改変
 これは(1)とも連動して後方支援を可能にする改正ですが、法律名が「周辺事態法」から「重要影響安全確保法」と名を改めます。この法律ができると、国連武力行使決議がなくとも、また緊急の場合は国会の事前承認がなくても、自衛隊は日本の存立に重要な影響を与える地域ならどこでも米軍等の後方支援が可能になります。
 この改変と(1)の改正が組み合わせることで、日本は状況次第で南シナ海で米軍その他の国の軍隊とともに中国軍と戦う可能性もあれば、中東付近でIS相手に戦う可能性も出てくるのです。
 不完全な軍隊である自衛隊しか持たない日本が、そこまでの軍事貢献をしなければならないのでしょうか。私は今回の政府改変案には大きな疑問をもっています。
(4)その他の法律の改正案
 割愛

4 「戦争法案」という批判が何故、日本にとって害悪なのか
 今回の法改正を「戦争法案」として廃案に持ち込もうとしている人達がいます。この人達は、中国や北朝鮮の危機をリアルに防ごうとする人達(いわゆる保守派)にとって迷惑であるばかりでなく、「とにかく戦争はイヤ。戦争の事を考えるのもイヤ」という戦後民主教育の多数派(?)にとっても害悪です。
 なぜなら、政府提出案は3で見たように、色々と問題を抱えています。一言で言うならば「アメリカの要求に対して満額回答過ぎるが故に危険」なのです。しかし、「自衛隊は米軍の支援なしで単独で戦えない」「中国政府が膨張主義を取っている上に中国軍が統制されていない」という状況では、アメリカの要求に対するゼロ回答は、満額回答以上に危険な選択になります。
 だとすれば、政府案(満額回答)を出発点にして、日本国にとってベストな回答を練り上げるのが政治に求められているのではないでしょうか。
全ての野党が「戦争法案だ」「徴兵制への道だ」などと言って騒ぐだけなら、政府法案は原案のまま通るでしょう。それで得をするのは、はなから政権を担当するつもりなどなく、支持者に「やっぱり政府は酷い」「安倍政権は怖い」という印象を植え付けることに成功し、得票数を増やすだろう共産党社民党だけです。それ以外の政党には政権担当能力なしとして、厳しい結果が待っているでしょう。

5 参議院による真摯な議論を期待する
 国内政治状況を理由に国際的な公約を値切る手法は、どこの国も使っている手です。アメリカなど、国際連盟を提唱しておきながら参加しないという荒業までやった国ですから、国会審議に提出した段階で、安倍政権はアメリカに対する義理を果たしたと言えるでしょう。
 維新の会からとても真っ当な修正案が提出されました。まだ1月以上もあるのですから、参議院では、この法改正により軽減するリスクと発生するリスク等をしっかり議論し、「自衛隊の現状に見合った貢献で、最大限平和の維持に資する」法律を制定してほしいと思っています。

参院こそはまともな安保関連法案の議論を

いよいよ参議院で安保関連法案の審議が始まります。

私は、日本国民の命と財産を守るために安全保障体制を強化することには大賛成なのですが、今回の安全保障関連法案には、2つの点で不満を持っています。

一つは、2年程前に一部で話題となった「ポジティブリスト」問題を、また避けてしまったという点です。
通常軍隊というのは、有事に敵国相手に活動する訳ですから何をやっても良い存在です。
しかし、人類の不幸な歴史から正規軍には「ガス兵器や生物兵器は使用しない」「敵国の市民は殺さない」「国際法規に違反する捕虜の取扱いはしない」等々の縛りをかけられています(その点がゲリラとの決定的な違いです)。
そしてこれを「ネガティブリスト(やってはいけないリスト)」と呼びます。つまり近代国家の軍隊は「ネガティブリスト以外は何をしてもよい」存在なのです。
ところが、自衛隊は「やってよいこと」=「ポジティブリスト」が定められていて、それ以外はやってはいけない。どんな時に発砲してよいかも全部定められていて、そうでない時に発砲したら後で処罰されます。これでは、有事の際にいちいち法令との整合性を判断しなければならず、機動面で致命的な弱点になります。
「直接侵略された場合以外は同盟軍の後方支援、ただし同盟軍が攻撃された際には駆けつけ警護も可能」という今回の政府案は、基本姿勢として至極真っ当ですが、それを個別に法律で縛る現段階での安保関連法案は、「法令のせいで機動力に劣る自衛隊」という大問題を先送りしてしまったという印象をぬぐえません。
現在の政治勢力で、その点を指摘できるのは「次世代の党」だけでしょう。幸い「次世代の党」は参議院議員の方が大勢いるので、政府案を修正させるところまでは届かないにしても、この議論を是非国会議論の遡上にのせてほしいと思います。
そうすれば、安保関連法案が通っても、自衛隊は米国の同盟軍として、韓国軍やオーストラリア軍よりも、遥かに消極的な役割しか担わない存在であることが浮き彫りになり、「戦争法反対」なんて叫んでいる勢力の欺瞞を間接的に明らかにできると思います。

政府案に対する不満の2点目は、マスメディアでもよく指摘されている「存立危機事態」という概念の曖昧さです。
政府が諸外国への配慮から、これを明確にできないのは理解できますが、メディアは明確にして議論すべきでしょう。
政府案文言のままでは、中東危機が含まれてしまう可能性を否定できません。中東においてはイスラエルよりの米国政府と産油国と友好関係を維持する日本政府の立場は異なります。ですから、米国の軍事行動を例え後方といえども支援すべきでないし、駆けつけ警護を引き金にした産油国との武力衝突などもっての他だと思っています。
その点では、「維新の党」の修正案である「武力攻撃危機事態」=「条約に基づきわが国周辺の地域においてわが国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態」というのが、より妥当だと思います。
しかし、中東を除外し南シナ海などを射程に含めた、よりよい文言があるかもしれません。

いずれにしても、政府与党と「次世代の党」「維新の党」が胸襟を開き、日本が将来にわたり、近隣の独裁国家に侵略されることのないよう、無益な戦争に巻き込まれることのないよう、しっかりと議論してほしいと思っています。

敵の敵は味方というロジックでイスラムを語る危険

イスラム国による日本人誘拐及び殺害事件に対する安倍政権の対応を評価する人が約6割で、身代金を払うべきでないと考える人が約7割という調査結果が出た。

左翼的正義を信じている人にとって、今の日本社会は恐ろしく右傾化しているんだと思う。
しかし、私の立場からすれば急激に日本社会がまともになっているとしか思えない。

もちろん200億円もの身代金を払うべきと考える人が2割近くもいるのだから、左翼的正義を頑なに信じる人もまだ多少はいるのだろう(あるいは幼児的な「〇〇ちゃんを何としても助けてあげて」という感性だけなのかもしれないが)。

中東問題に関して

1 中東と欧米(特に米英仏)は対立関係にある。
2 日本の右派は欧米諸国の中東における軍事行動を支持するが、日本の左派は彼らの軍事行動を支持しない。
3 よって日本の左派は「敵の敵は味方」という論理により中東の味方である。
という論法を左翼は戦後ずっと得意としていた。

この論法には、大抵2つのおまけがつく。

4 さらに日本国は米国に原爆を落とされたという点でも米国に空爆されている中東地域と同じ苦しみを共有している。
5 その上、日本には素晴らしい憲法9条があるので未来永劫中東で軍事行動を起こさない。

しかし、
これらの主張は世間から完全に見放されたようである。
最後の引き金を引いたのは後藤健司氏の母親だ。
あの前代未聞の愚かな会見により、中東問題と原爆や日本国憲法を結びつける主張は、それだけで「頭が悪そう」という認定を受けるだろう。

それはそれで喜ばしいことである。
ただ問題は、かつての古い左翼論理に対する反作用で、わが国の保守系の人達に親イスラム派が少ないような気がする。

実際には中東諸国は単純な反欧米ではないし、イラクのクエート侵攻の際には軍事的貢献をしなかった日本に対する評価は低かったというように、先に示した左翼の中東問題ロジックなど、日本の知能の低い人達を騙すためのマガイモノに過ぎない。


同じ「敵の敵は味方」という単純なロジックならば、中国の軍事的脅威にさらされる日本にとっては、
1 中国は今現在もウイグル地区においてイスラム教徒を弾圧している。
2 これに対し日本の左派は、それを見殺しにしている。
3 まだ大きな声ではないが、日本国内で唯一これを批難しているのは右派である。
4 したがって、日本の右派こそがイスラムの味方である。
という方が説得力があるだろう。

ただ、私としてはそのような「敵の敵は味方」という論法ではなく。
素直に
1 イスラム教徒に対する一切のヘイトクライムがなく
2 宗教的寛容性という点でキリスト教系の先進国よりも優れ
3 エネルギーの商取引という点で経済的利害も一致する
日本は、
イスラム地域の政治体制、宗教体制がどのようなものになったとしても
最も友好関係を維持すべき相手である
と主張するのが妥当だと思う。

今回の事件がどのような結果で終わっても、日本とイスラムの友好に傷がつかないことを祈っている。

「表現の自由」に値しないが、テロは許されない

風刺画と表して、東日本大震災で苦しむ日本人の手を4本に描いた出版社がテロ攻撃を受けた。
テロを受けた原因は、イスラム教の教祖であるムハンマドを侮辱した絵だと推測されている。
その絵をネットで見たが、とても「表現の自由」の名で保護に値するものではない。

これは「朝鮮人を地球から追放せよ」と言ってる一部のおかしな人々と同レベルのものだ。
ヨーロッパの移民に対する感情を考えれば、この「風刺画」を描いた者やそれに喝采を送る者
の感情も、在日コリアンというだけでその人たちに汚い暴言を吐く者と通低するのだろう。

日ごろ「ヘイトスピーチは許さない」と叫んでいる人々は、この問題をどう捉えるのだろう。

私は、「線引きをどうするか」「判断をどこに委ねるか」といった点を考慮した上で、ヘイトスピーチ規制には反対だが、「朝鮮人を地球から追放せよ」という主張が言論の自由の名で守られるべきだとはまったく思わない。

それでも、そのプラカードを掲げた人に対する暴力は罰せられるべきだ。

今フランスで起きている問題は、
言論の自由」VSテロリスト
の問題ではない。

言論の自由に値しない糞出版社が、テロリストの標的になった。
どれほど軽蔑に値する人間であったとしても、テロで無慈悲に殺すことは許されない。
ただそれだけのことだ。

勝負の予想がつかないのにワクワクしない

衆議院が解散になりました。

自民党単独過半数を維持できるか。
与党が単独過半数を維持できるか。
自民+維新+次世代=改憲派で3分の2を上回るか。
等々

今回の選挙結果は何一つ予測が立ちません。

マスコミの選挙結果予想もバラバラです。

でも、まったくワクワクしない。
なぜでしょう?
それは、総理が問うべきことを問うてくれなかったからだと思います。

私は今回の選挙が「大儀なき選挙」だとは思いません。
アベノミクスという経済政策は正しいのか、それを十分やれているのか?

ついこの間まで大不況下にあった日本における衆議院選挙のテーマとしては十分です。
でも、第二次安倍内閣がやろうとしていたことは、「戦後レジームからの脱却」であり、もっと大きなことではなかったのか。

それを堂々と選挙で問いかけてほしかった。
それが残念でなりません。

やっぱり
戦後レジームからの脱却」派=自民+維新+次世代
「このままで良い」派=公明+上記以外の野党
「革命」派=共産+社民
くらいの3勢力に分離・統合していただければ、票を入れやすいのですがね。

民主党政調会長の態度は素晴らしい

御嶽山の災害について「これは民主党による人災である」というネット世論に対し、民主党政調会長である福山哲郎氏が9月29日のブログで早々に反論されました。

反論の骨子は、
1 御嶽山文科省の大学機関の観測「強化」対象から外れたのは、自民党政権時の2008年12月であり、民主党政権によるものではない。
2 御嶽山は以前から連続監視対象26火山の1つで、民主党政権時に監視体制が縮小したり途切れたりした事実はない。
3 2009年度の補正予算はあくまで単発のもので、それ以前の自民党政権では火山観測予算は年約2.5億円の執行であったが、民主党政権では年5.8〜5.5億円の予算執行を行い、観測体制を整備してきた。

というものです。

火山関係の予算は少々変わっていて、文部科学省気象庁にまたがって付けられており、観測もそれぞれが行い。その代わりに合同会議等で意見交換し省庁が連携を図っています。従って単年度の気象庁補正予算は削ったが、文部科学省予算も含めれば政府全体として火山活動観測に力を入れていたという主張は、現段階での反論としては非常に合理的です。
私は、民主党福山哲郎氏の政治姿勢もまったく評価しておりませんが、この反論が事実であるならば、「民主党人災説」は言いがかりというべきでしょう。

その前に勝間和代事務所から出されていた「100%の予測が不可能だから切った」という趣旨の弁明と比較すれば、極めて真っ当な反論だと思います。

またダンマリを決め込むだろうと予測していた、私の民主党への評価も変更すべきかもしれません(それでも政策は支持しませんが)。

後は、「民主党人災説」の根拠である朝日新聞の記事や仕分け人である勝間氏の弁明との整合性をどう考えるべきかという論点が残りますが、今後の議論の行方を見守りたいと思います。

いずれにしても、「たかがネット」と相手にしなかったこれまでのスタンスが、野党第1党において大きく変わってきた点を嬉しく思います。

民主党は御嶽山問題に意見表明を

 御嶽山の噴火により大勢の方が被害にあいました。心からお見舞い申し上げます。

 さて、メジャーメディアは今のところ沈黙していますが、ネット内では今回の災害は単なる自然災害ではなく、民主党政権による人災ではないかという主張が流れています。

 民主党政権は、活発に活動する火山について高精度の監視機器を設置するという国土交通省の事業について、大規模噴火は数千年に一度なので24時間の監視は不要として、事業費をばっさりと切りました。
 しかも、その際に1979年、1991年、2007年とまさに活動中であった御嶽山も監視対象から外してしまったのです。

その後、自民党政権が復活して、平成25年度予算から御嶽山の常時監視も始まりましたが、自然災害の予測には過去データの積み重ねが不可欠ですから、気象庁の担当官が予想できなかったのも無理はありません。

ということで
民主党さえ、あの時『仕分け』しなければ今回の噴火を予測できたかもしれない。だから今回の惨劇は民主党による人災だ」
というのが、民主党人災説の主張です。

ブランクがなければ噴火が予測できたのか、できなかったのかは誰にも分かりません。ですから民主党人災説はいささか乱暴と言わざるを得ないでしょう。

ただ、私はこれほど多くの被害者が出ているのですから、民主党は公党としてあの時の仕分けが正しかったのか、間違っていたのかについて、意見を表明すべきだと思います。

行政は費用対効果を常に考える必要があります。
「火山監視が費用対効果の点でとても「合わない」事業だと判断した。自民党政権が事業に予算を付けたが予測できなかったではないか。我々の仕分けが正しかった証拠である。」
でも良いのです。

これについて関係者の中で今のところ唯一弁明しているのが、仕分け人に指名された勝間和代氏です。
「いくら精密に監視をしても噴火を100%予測することは不可能である以上」他の方法があると問題提起したのだと主張しています。
「予算をつぎ込んだ分だけ噴火予測の精度が確実に上がるのであればそれは素晴らしいことです。しかし、残念ながら地震や噴火などの地殻変動を完璧に予測するシステムは確立されておりません。」

100%ではないから、完璧に予測できないから予算を切って良いのならば、天気予報の予算も含めて気象庁の予算は全額削減すべきです。直ちに弁明する姿勢は評価しますが、内容があまりにエキセントリックに過ぎます。野党第一党民主党がこのような「オールorナッシング」論で言い逃れするのは勘弁してほしいと思います。

さて、民主党はこの議論にどう答えるのでしょう。ダンマリを決め込むつもりでしょうか?